安西先生に学ぶ、人の「やる気」を引き出す方法

2016年9月22日は、日本のバスケットボール界にとって新たな時代の幕開けでした。Bリーグの開幕です。

そんなバスケットボールが日本に広く普及した要因のひとつとして、漫画『スラムダンク』が挙げられます。個性的なキャラクターと、怒涛の展開が魅力ですが、その登場人物のひとり、安西先生の言葉に感銘を受けた記憶がある人も多いはず。

じつは彼の行動は、実社会においても役立つものばかり。遠越段さんの著書『人を動かす! 安西先生の言葉 「スラムダンク」に学んで成功しよう!』より、安西流コーチング術をまとめました。

コーチングの基本は
「よく見ること」から

安西先生は、主人公である桜木花道の無礼さや非常識さに惑わされない指導者でした。

コーチングの基本姿勢は、よく見ること。じっくりと、正しく選手たちを観察し、長所や短所を見極めることが大切なのです。

新チーム立ち上げときの話。安西先生は、インターハイ全国大会出場を目指す過程において、必ず倒さなければならなくなるであろう陵南高校と練習試合を組み、その前に一年生と上級生の試合を提案します。主将の赤木は、まわりの言うことを聞かない初心者の桜木を試合に出したくありませんでした。当の本人は同級生の活躍にいてもたってもいられず「いいところを見せたい」という思いであふれていました。

安西先生は赤木に桜木の出場を薦めます。確かに桜木のプレーはめちゃくちゃでしたが、スピードやジャンプ力などは並大抵のものではありません。安西先生は、彼の才能をじっと観察し、魅了されていくのです。

すべてのコーチングは、先入観を取り除いた「正しい観察」から始めなければいけないことを、安西先生は体現したのです。

自分ひとりで
すべてをやろうとしない

コーチングは「自ら動き、考え、成長していく」という姿勢を本人に徹底させることが大切です。

初心者であった桜木に、基礎的な動きを指導していたのはマネージャーの彩子。しばらくは基礎練習ばかりでしたが、赤木はレイアップシュートを練習させることを安西先生に申し出て了承されます。しかし、なかなかうまくいきません。

見かねた彩子は、安西先生にアドバイスを求めますが、泰然として「赤木主将に任せてありますから大丈夫ですよ」と返します。もちろん、安西先生自ら手取り足とり教えることもできますが、そうはしません。

その後、桜木は早朝から自主練習し、中学までバスケットボールをやっていた晴子にアドバイスをもらうなどして、レイアップシュートをモノにしていきます。

桜木は、自ら考えて工夫するだけでなく、まわりの人たちの教えを参考にしつつ、成長しました。あえて突き放すことで、安西先生のコーチングが成功したのです。

言葉の力を
最大限に活用する

安西先生は口数が少ない人物です。よく見て、観察して、ここぞというときに相手の心にズシンとくる言葉を話します。この一言が、選手たちの指針となり、心のよりどころになるのです。

陵南高校との練習試合、桜木はスターティングメンバーではありませんでした。納得いかなかった桜木は、なぜ自分がスタメンじゃないのかと問い詰めますが、安西先生は「キミは秘密兵器だからスタメンじゃないんです。秘密兵器は温存しとかないと」と伝えます。この言葉は作ったものではなく、本心だったはず…。だからこその説得力がありますよね。

試合は惜しくも敗れ、桜木は俺を出すのが遅すぎたから負けたんだと言い寄りますが、安西先生は「ほっほっほ 桜木君 あわてるでない これからこれから」と返しました。

安西先生の言葉には愛と真実がこもっています。だから言葉の力が最大限に活かされ、桜木に信念が伝わり、奇跡を起こさせることにもなるのではないでしょうか。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。