あるタクシー運転手の話から考える「運命の選択」について

人生を変える、運命の選択。おそらく多くの方がこれまで、何度かそういった経験をしていることでしょう。そして、その結果はやはり誰にも分からないものです。だけど、そんな「運命」を少しでも良い結果に導くことが、誰だって可能なのです。

経営コンサルタントで、『人生と経営はタクシー運転手が教えてくれる』の著者・小宮一慶さんが出会った、タクシー運転手さんとのエピソードを紹介します。

他人や環境に文句をつける人に
なってはいけない

著者である小宮さんは、四国の高松空港からタクシーに乗ったとき、いつものように運転手さんと話しはじめました。

聞いてみると、運転手さんはもともと瀬戸内海を航海する客船の甲板員だったとのこと。いつかは自分も資格を取って、航海士や船長になりたいと思っていたそうですが、会社は免許取得にまったく協力的でなく、会社を辞めなければ免許を取れない状況だったそうです。結局、資格はあきらめ、航海士になれないなら船乗りもやめようと踏ん切りをつけて、タクシー運転手になったのです。

「あのとき資格を取って船乗りのままだったら、今ごろ大変だったと思います。早く辞めてよかったですよ」と運転手さん。そう、現在、瀬戸内海を航海する客船はなく、フェリーがわずかに残っているだけ。本四連絡橋ができてから、従来の客船はなくなってしまったのです。

運転手さんはそれを見越して船乗りを辞めたわけではありませんが、早々に前職に見切りをつけ、前向きにタクシー運転手になったことが、今となっては良かったというのです。人生とは、本当にわからないものなのです。

小宮さんは「人には運命があって、その運命のなかでしか生きていけないのだ」と考えます。ただ、運命は太いチューブのようなもので、チューブのなかの上の方を歩むか、下の方を歩むかはその人次第。「なれる“最高の自分”になる」という意識を持って、運命というチューブの一番上を歩めるように前向きに努力することが大切なのです。 

もちろん、生きていれば天災や時代の変化など、抗いがたいことが目の前に現れることがあります。そうした局面に向かい合ったとき、他人や環境に難癖をつけてただ逃げるのではなく、自分の能力を100%発揮して、環境を自分で変えてやろうというぐらいの気持ちを持つことが、やはり大事だといえるでしょう。

先ほどの元船乗りのタクシー運転手さんは運命を受け入れたうえで、前向きに転職することができたのかもしれません。船乗りだけに一見荒々しい感じがしましたが、じつは心は荒れておらず、向上心のある人だったのです。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。