ブサイク野菜を届ける企業がオリジナルの絵文字で伝えたかったこと

産直野菜のデリバリーサービス企業が、キュートな野菜の絵文字を制作しました。普通に考えれば「何のため?」となるところ。けれど、彼らの絵文字に込められた意味をていねいに紐解いていくと、いまアメリカが抱えている農作物の流通網の縮図が見えてきます。

では、まずはその絵文字から見ていきましょう。

絵文字にして伝えたい
ブサイク野菜の現状

これらのキュートなイラストは、アメリカのスタートアップ「Hungry Harvest」が制作したemoji(絵文字)です。ジャガイモで表現した「ハート」、イチゴを人の手に見立てて「いいね」のサインをつくったり。

一見すれば、“らしく”デザインされているといった印象を受けるのでは。ですがこれ野菜をディフォルメしたワケではなく、畑から収穫された本物の野菜のかたちそのものを表現したもの。

イチゴも

ジャガイモも

ニンジンだってこのとおり

さて、ブサイク野菜たちを絵文字にしたHungry Harvestですが、実のところデザイン会社ではないんです。彼らのビジネスは、こうした規格外の野菜やくだものを農家から直接買い付け、ブサイク野菜の産直詰め合わせセットを宅配・販売すること。

絵文字は規格外として市場に出回らない農産物の存在と、それが捨てられている現実を、広く若者層に知ってもらうためのアピール戦略のひとつだったそう。

毎年、農作物の約20%が
出荷されぬままゴミとなる

毎年、場から収穫される野菜やくだもののうち、5個に1つは市場に出荷されずにゴミとなって捨てられるもの。こうアメリカの食品ロスの現状を訴えるHungry Harvest。それも、ただ見た目が不恰好という理由だけで。

一般的な流通網に乗せて市場へ出す以上、サイズや形状、状態に厳密な規格が設けられているのは日本もアメリカも変わりません。農家がこうしたブサイク野菜を省いた結果、前述の数字になるんだとか。

必要とする人たちの元へ
産直の規格外野菜をデリバリー

上の写真は、週に1回15ドル(約1,500円)で定期配送される、規格外野菜の詰め合わせセット。収穫中にできたキズがある、カタチがいびつ、色がくすんでいる…などなど。市場の半分ほどの価格でこの種類。

少しくらい不恰好でも、それが味に影響を与えることはほとんどありません。要するに気持ちの問題ひとつでしょう。

ちなみにHungry Harvestは、これまでにのべ453トン以上の規格外農産物を、農場から一般消費者へと届けてきました。そしてもうひとつ、同社の命題のために136トンを寄付してきたのです。それが、アメリカ人のおよそ6人に1人が食べ物にありつけず苦しんでいる、という現実。

ムダに捨てざるを得ない人たちがいる一方で、食べ物に瀕している人たちもいる。ふたつの問題を同一線状でとらえ、宅配ビジネスでソリューションを考えた彼らのビジネスモデルに、いまエココンシャスな人ばかりか、多くのアメリカ人たちが賛同をはじめたようですよ。

Licensed material used with permission by Hungry Harvest
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。