「車いすの男」が、300マイルの過酷なトレイルライドに旅立ったワケ

8月13日、アメリカに住むひとりの男性が、300マイル(約480km)の旅に出る決意をした。ちなみに彼は、首から下が動かない四肢麻痺の障がいを抱えていて、電動の車いすを使っている。

にも関わらず、彼が選んだルートはきれいな舗装路などではなく、トレイルや自転車道。つまりハイカーや自転車のアクティビティに使用される道だ。なぜ彼は、そのような過酷な旅にこだわったのか。

自転車好きの26歳に起きた
突然のクラッシュ

彼の名前は、Ian Mackey(イアン・マッケイ)。隣の女性は、彼の生活から今回のプロジェクトまで支える母親のティーナだ。

そんな彼に悲劇が襲ったのは2008年、26歳の時だったそう。当時UCSC(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)に通っていた彼の楽しみのひとつは、キャンパスのある丘に自転車で通い、放課後に“クール”な自転車道を下ってくることだった。

その日もいつもように気持ちよく風を浴びながら走っていたら、突然の砂で予想外のスライド、完全にコントロールを失ってしまい、頭から木に激突したのだ。唯一の救いは、ヘルメットをしていて命が助かったこと。その代償に、脊髄損傷で四肢麻痺と診断された。

「それでもアウトドアが
好きだった」

もちろん、絶望に打ちひしがれないわけがない。人工呼吸器なしでは生きていくことさえままならず、最初の数年は地獄のような毎日が続いた。

しかし、愛する家族とリハビリを続けるなかで、徐々に自分に起きたことを受け入れ、呼吸法や車いすの使い方(口元のストローのようなデバイスで信号を送る)を学び、同じ障がいを持つ仲間にも出会い、また2年ほど前から大好きな「アウトドア」への情熱が再燃したのだ。

もっとアクセスしやすい
トレイルや自転車道を

学生時代、植物学や生物学を専攻していたイアンは、自らを「サイクリストであり、バードウォッチャーでもあるんだ」と語るほど、自然への想いを強く持っていた。

そして「今の自分にできることはなにか」と考えた結果、彼は300マイル10日間のトレイルライドに出ることにしたのだ。「Rolling across Washington」と名付けられたこのプロジェクトは、アクセスしやすいトレイルや自転車道の保善を提唱していて、この活動にはワシントン州のサイクリングコミュニティも協力。情報を集めたりMAPをデータとしてまとめるなど、大きな一歩につながっているそう。

彼は、MashableAsiaのインタビューにこう答える。

「私たちはみんな一緒です。サイクリストも、ベビーカーを持った母親も、ジョギングをする人も。そこにトレイルがあるのなら、全員のためにあるべきなのです」

幸運にも、彼の住むワシントン州は車いすでアクセスできるトレイルが多いようだが、「同じ障がいを持つ、各地の仲間にとっても大事なことなんだ」と。

彼の挑戦や旅の記録は、こちらで更新されている。

Licensed material used with permission by Ian’s Ride
Reference:MashableAsia
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。