サンタモニカに佇む、スケボーカルチャーのルーツへ

得てして、カルチャーのルーツを探ってみると、とても小さなものから始まっているもの。何度目かのブームが再燃しているとも言われているスケートボードのルーツも、サンタモニカの目立たないスケートボードショップ「リップシティ」から始まった。

オールドスケートアートの源泉がここに。

このリップシティは、ウェス・ハンプストンや、マーク・ゴンザレスなど、スケボーに乗らない人にも名を知られているアーティストが手がけたデッキ(板)や、写真などが所狭しと飾られている。

狭いながらも、スケボー好きからしたら「天国」みたいな場所だ。

これらレジェンドの作品は70年代後半のものが多く、いま再燃しているカルチャーの王道的なものと言える。

ここサンタモニカだけでなく、スケートボードの昔のテイストのリバイバルはNYなどにも派生していて、70s〜80sのヒストリーやローカルカラーを売りにしているショップは跡を絶たない。つまり、いま一番ホットな場所こそ、ここなのだと言えるかもしれない。実際、ステューシーがコラボレーションを仕掛けたりと、日本にもその名が轟いている。

映画の舞台、ドッグタウンはこの界隈。

1978年の開店当初は、ローラースケートとスケートボードの両方を扱うショップで、当時は折しもローラースケートが大ブーム。スケートボードは日の当たらない存在だったところ、オーナーのJ・マクダウエル氏が多くのブランドをかき集め、少しずつメジャーになっていった。

これらは、1970年代の西海岸スケートカルチャーを描いた『ロード・オブ・ドッグタウン』に詳しいところ。ジェイ・アダムス、トニー・アルバ、ステイシー・ペラルタら伝説のチーム「Z-BOYS」が、いかにスケートで生きていくかを垣間見れる作品だが、彼らの舞台であり、リップシティでも売れ線のブランド「ドッグタウン」こそ、このリップシティを含むサンタモニカ界隈のこと。

スケートカルチャーは、こうした70年代にハンプストンらが築き上げたテイストのものからはじまり、プール跡地でのスケートから、バンクを使ったもの、ストリートでのトリックなど、多様に分かれていった。

かつてチーマーが好んだバギーパンツから、少しずつズボンが細くなり、スキニージーンズでスケートするまでになったが、昨今はむしろこのリップシティに代表される、スケートボードのルーツにこそ「イマ感」がある。

このオールディーズな店構え。隣はペットのグルーミング店が入っている。「サンタモニカ・エアラインズ」は、レジェンドブランド。

「ここは、アルコールを出さないバーみたいなもんだ」

リップシティに入ると、マクダウエル氏と客が長々と話をしていることがしばしば。昔話に花を咲かせているが、この写真のように気さくに挨拶にも応えてくれる。

「昔はこのデッキに乗ってたんだよ」とか「このブランド好きだったね」とか。大物スケーターもこぞってこのリップシティを訪れているので、スケートフリークには、きっとたまらない空間だろう。

Photo by Inagaki Masanori
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。