世界中で話題になった、あの「青いワイン」はどのようにして生まれたのか?

2016年6月、スペインで新発売された1本のボトルにワイン業界全体がざわついた。なにせその色が赤でも白でもロゼのような中間色でもなく、雑じりっ気のないインディゴブルーだったから。メディアも一斉にこれを取り上げ、一夜にして斬新な「青いワイン」が広まった。

けれど、色よりもっとセンセーショナルだったのは、このワインをプロデュースしたのが、20代のクリエイター集団だということのほうでは?なぜなら彼ら、誰ひとりワインの醸造に携わったことすらないシロウトだって言うんだから。

自分たちが飲みたくなる
どこにもないワインをつくろう

彼ら全員がワイン作り未経験だったこと、そして6人がクリエイターであること。これが青いワイン誕生の決定打だろう。酒造メーカーやワイナリー経営者がひとりでもいれば、どうしたってトラディッションを少なからず意識したはず。

もちろん、そこにリスペクトがなかった訳ではない。そのうえで彼らが目指したのが、ワイン業界の伝統を打ち破る革新だ。

競争の激しい今のワイン業界の荒波(彼らはそれをレッド・オーシャンに喩える)で戦いを挑むのではなく、もっとカジュアルで、自分たちの世代がリラックスして楽しむためのフラットな海、つまりは“ブルー・オーシャン”を、と。そんなコンセプトから生まれた「青」こそ、競合同士でつぶし合う必要のない、誰も見たことのないワインだった。

スペインとフランス、赤と白
植物由来の色素が「青」を生む

ところで、やっぱり気になるのはこの色。

スペイン、フランス両国の赤と白のブドウを独自にブレンドし、皮に含まれる色素アントシアニンとこちらも天然顔料のインディゴを配合しているという。チームはバスク大学と食品メーカーの技術協力を得て、まさしく青と呼べる色のワインをわずか2年ほどでつくってしまった。

これまで、ブルーベリーエキスで着色した、プロヴァンスやカリフォルニア産のスパークリングワイン(こちらは淡いブルーが代名詞)と比較しても、インパクトだけ取ってみれば間違いなくこちらが上。

「多様性」はミレニアル世代の
生き方そのもの

国境をまたいで、さらには赤と白2種類のブドウを融合させてしまう。こうしたアンチテーゼをひとつずつ取り壊した先に、誰も見たことがなかったまったく新しいワイン色が生まれた。

スタイルや格付けなんかに、まだこだわってたんだ。

とガツンと頭を叩かれた気分。若きクリエイターたちの自在な発想力と表現方法に、新しいライフスタイルを自分たちで創造していく、ミレニアルズの軽やかな感性がそのままシンクロして映るのは、私だけではないはず。

その味わいは……なんて、野暮なこと書きません!それは自身で確かめればいいことだからね。

自国で大反響を巻き起こした、このワインの名は「Gïk(ギク)」。すでに7月からフランス、イギリス、ドイツ、オランダで発売を開始した。この夏、手にするチャンスは少ないかもしれない。それでも、群青のグラスを傾ける日が待ち遠しくて仕方ない。

Licensed material used with permission by Gïk Live
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。