「セックス・ピストルズ」がいた家が、歴史的建造物に指定

このたび登録されたロンドン・デンマークストリートにある2件の建物は、もともと歴史的建造物として公式登録されていた場所。しかし、2016年3月22日にそのランクがアップグレードされ、2番目に重要度が高い「Grade II*」に指定されました。

どちらも17世紀に建てられたもので、そのうちのひとつは、セックス・ピストルズのメンバーが暮らし、レコーディングを行なっていたことで知られています。

17世紀の建築とパンクカルチャー

リストを管理している「Historic England」によれば、6番地と7番地にある建物は、それぞれ1686年・1691年に建立されたもの。改修された部分はありますが、壁や装飾、階段など、当時のまま残存しているところも多いそうです。また、1960〜70年代にかけて活発化したイギリスの音楽産業における文化的背景が評価に含まれています。

建物の内部には、セックス・ピストルズのメンバーが寝泊まりしていた部屋、その壁にはメンバーのジョニー・ロットン(ヴォーカル)が描いた絵も。これも当時のパンクカルチャーを示す貴重な物理的資料として認識されています。

ちなみに、同じ通りの4番地には、ザ・ローリング・ストーンズがレコーディングを行なった「Regent Sound Studios」が。そのほかデヴィッド・ボウイやエルトン・ジョンが通ったカフェ「The Giaconda Dining Room」も。

セックス・ピストルズのマネージャーであり、パンクの父とも呼ばれていたマルコム・マクラーレンがこの建物を借りていたのは1975〜77年の間。1階のスタジオでは初期デモ音源が録音され、2階にはメンバーのスティーブ・ジョーンズ(ギタリスト)やグレン・マトロック(初代ベーシスト)が住んでいました。

ガーディアン」紙には、査定を行なったPosy Metz氏のコメントが。

「リストアップの目的は、重要な歴史や文化に印をつけていくことにあります。パンクカルチャーは、そういった文化史のひとつだと思っています。表現の自由など、多くのことを教えてくれるものです。それが価値として認められ、理解されるのは大切なこと。それが認定の決め手というわけではありませんが、評価の一部ではあります」。

賛否両論の声も

セックス・ピストルズと言えば、当時王室や政府、大企業を名指しで批判したバンド。もちろん、価値のあるものとして認知されることを快しとしない意見も。そして、こういった風潮に反対しているのは、パンクカルチャーを認めたくない人々だけではないようです。

2016年11月26日は、彼らの楽曲『Anarchy In The UK』のリリース40周年。そのため、年間を通して「Punk.London」というイベントが開催中。これには、大英博物館やロンドン博物館などが支持を表明しており、イギリスの女王陛下からも祝福の言葉が公式に発表されたほど社会的にも認知されています。しかし、「Dazed」によれば、これを快く思っていないのが、マルコム・マクラーレンの息子である実業家のジョー・コーレ。

今となっては、当時考えられないほどの認知度を得た「パンク」。ただ、もともとは変化を象徴するムーブメントとして流行したものでした。彼は、展示品として扱われている状況に不快感を露わにしている様子。なんと、自身が所有している8億円相当に及ぶパンク・コレクションを、11月26日にすべて燃やすと発言し注目を浴びています。

Dazed and Confused Magazine」には、彼をインタビューした動画が投稿されていますが、どうやら母親のヴィヴィアン・ウエストウッドも彼の意見を支持している模様。

当時のことを知らない人々にとっては、どれもその歴史を知るための貴重な資料となり得るでしょう。しかし、彼のような意見もあるようです。

Top Photo by Richard E. Aaron/Redferns/Gettyimages
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。