「仕事も家もひとつだけ」って誰が決めた?自分の居場所を増やすパラレル・ライフスタイルとは

安藤 美冬

フリーランサー/コラムニスト

1980年生まれ、東京育ち。雑誌『DRESS』の「女のための女の内閣」働き方担当相、越後妻有アートトリエンナーレオフィシャルサポーターなどを務めるなど、幅広く活動中。これまで世界54ヶ国を旅した経験を生かし、海外取材、内閣府「世界青年の船」ファシリテーター、ピースボート水先案内人なども行う。『情熱大陸』などメディア出演多数。著書に『冒険に出よう』、『20代のうちにやりたいこと手帳』、新刊に『会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術』などがある。
公式サイト:http://andomifuyu.com/

数年前、時代の多様化のなかで“働き方”が話題になった。そして今、その流れはもっと広い“ライフスタイル”という領域にまで及ぼうとしている。そのなかで話題にのぼることが増えたのが複数の住まいを持つ「2(多)拠点居住」という考え方だ。たとえば平日は東京で過ごし、週末を地方で過ごす。そうやって複数の拠点を行き来することで、生活をより充実させようというのである。

こうしたスタイルについて、前述した“働き方”について考えるきっかけを生み出したキーパーソンの一人でもある安藤美冬さんに話を伺った。


複数の仕事と家を持つことが
リスクヘッジになる!

ーー最近では複数の仕事を平行しておこなう「パラレルワーク」だけではなく、複数の住まいを持つ「2(多)拠点居住」というスタイルを実践している人も増えていると聞いています。安藤さんはこのライフスタイルについてどうお考えですか?

安藤 仕事にしても住まいにしても、「複数」持つというのは今の時代のキーワードだと思っています。前からずっと言い続けていることなんですが、仕事をひとつに決めない、住む場所もひとつに決めないというのは、リスクヘッジになるんです。天変地異が起きたときに一方がダメになっても安心ですし。それに多方向から刺激を受けられるので、クリエイティブな発想も生まれやすいんじゃないでしょうか。

ーー「パラレル」自体がこの時代に合ったワードということでしょうか?

安藤 そうですね、合っていると思います。今では企業でも在宅ワークを許可しはじめたりして、どこにいても仕事ができる時代になってきているんだなって。これまでだったら都心と地方の2拠点居住って、主に金銭的な面で無理だったと思うんです。でも今では、SkypeやLINEなど無料で通話したりチャットできるアプリがいくらでもありますし、移動するにしてもLCC(ローコストキャリア)のおかげで、かつての半分ぐらいにコストを抑えることができますよね。

仕事については東京の方が選択の自由がありますし、情報を手に入れるのもカンタンです。だから平日は東京で働いて、週末は自然が豊かな田舎で過ごすのはアリだと思います。美味しいものを食べたり新鮮な空気を吸ったりというのは仕事をがんばる原動力にもなりますよね。お互いのいいとこ取りができるのが「2(多)拠点居住」の魅力なのかと。

シェアオフィスから始める
パラレルワーク

ーーとはいえ、実践できている人は限られていますよね。

安藤 こういったライフスタイルをつくっていける人って、物質的な充実が図れた人たちが辿り着く境地なのかもしれません。現実的に、2拠点居住をやろうと考えたら月に10万円以上はかかるじゃないですか。それって普通の人たちからすると、ちょっと現実的じゃない。

ーー理想論で終わってしまう部分はあると思います。

安藤 2拠点居住の本質って、AとBという性質の異なる場所を行き来することで、クリエイティビティが向上するようなことだと思うので、別に会社とシェアオフィスでもいいと思うんですよ。それこそ環境が自分を変えるという論理と同じで。自分の人生を変えるために住む場所を変えた結果が、2拠点居住ってことですよね。

ーー居住となると、そうそう気軽にはできませんよね。現実的なセンで、すぐにできそうなことってあるでしょうか?

安藤 シェアオフィスを借りるのが一番オススメですね。今って、1万円くらいあればフリーデスクを借りられるんですよ。

ーーそれはフリーランスではなく、会社員が借りるということですか?

安藤 そうです。シェアオフィスってフリーランスの人が借りるイメージってありますよね。実際にそうなんですが、全体の1割は会社員だったりするそうです。

ーー意外でした。そういった人たちはシェアオフィスで何をしているんでしょうか?

安藤 集中して仕事をしている人もいれば、資格試験の勉強をしたり、ひとりでじっくり本を読める場所がほしいという理由で借りている人もいます。あとはいろんな人に会いたいというのも大きな理由のひとつです。

自宅と会社の間にシェアオフィスを借りると、そこが自分にとってのクリエイティブな居場所になって生活に変化が起こるんですよ。だから月に1万円の出費でも借りるべきだと思います。カフェで毎朝勉強するとして、1回350円×30日で大体1万円くらいじゃないですか。その出費をシェアオフィスに充ててみると、人生が変わるきっかけになるかもしれません。

ーーそれなら今すぐにでもできそうです!

夢を語って悦に入るのではなく
小さな実践者を増やしたい

安藤 「2(多)拠点居住」ってとても魅力的なんですが、普通に会社で働いている人にとっては、やっぱりハードルは高い。とはいえ、日常の中でパラレルが体験できればいいわけですから、シェアオフィスを借りるだけでも十分だと思うんですよね。

居住に関して私も興味はあるんですが、自分がまだ実践できていないので腑に落ちていないんです。逆にパラレルワークの方はずっとやってきていることなので、意義や魅力を語る自信はありますけど。

ーーどういったところで腑に落ちてないのでしょうか?

安藤 結局、本当にやろうと思っても忙しくてできないじゃん!ってところに落ち着く気がするんです。働き方でも週末起業とかお家起業について、いろんな切り口から語ってきましたけど、なかなか実践するまでは至らないケースが多いですから。

私、「これ、面白いね」って言われながら話のネタとしてだけで消費されていくことにはまったく興味がないんですよ。だから、コンテンツがいくつシェアされたみたいなことにあまり意味を感じてなくて。

ーーどうせなら実践してくれる人を増やしたい、と。

安藤 そう、私は新しいライフスタイルについて、語ることで気持よくなりたいわけではないんです。とにかく「実践者」を増やしたい。どんなかたちでもいいから、実践する人が増えたらとても嬉しいですね。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。