過酷な環境でも農作物が実る魔法の「グリーンハウス」

エチオピア北部の町ゴンダルは、年間降雨量が極端に少ない地域。激しい干ばつに見舞われ、土壌もやせ細り、この地で農業を営む人々は町を捨て、他の地域に移っていく人が多いそうです。そんなゴンダルの農家を救い、過酷な気象条件を逆手にとった温室が、いまこの地を救おうとしています。

露を集めて散水
雨量の少ない土地でも
植物が育つ温室

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多機能型温室Roots Upで、不毛の地の再生プロジェクトに取り組むのは、エチオピアで活動するNPO団体「Roots Up」。彼らがデザインした温室のイメージ図が上の写真です。
この温室、ただ食物を育てるだけでなく、農作業に必要な灌漑用水、さらには安全な飲み水の確保もできてしまう。乾燥した大地に合わせてデザインされた、まさに多機能なグリーンハウスなのです。

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日中、温室内の温度は上昇し続け、ハウス内部には暑い空気が閉じ込められます。この熱が、植物の成長を促す湿度を内部に充満させるばかりか、Roots Upにおいて最も重要となる機能である、露を溜めることができるんだそう。

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日中の寒暖差が激しいゴンダル。太陽が沈んでから翌朝を迎えるまで、テントの表面温度は急激に低下していきます。この温度変化を利用することで、水滴となった露を無駄なく収集できるという訳。
化学の実験を思い出してください。水蒸気を含む空気を冷却したとき、蒸気の一部が気体から液体へと変化する「凝結」を利用して、植物の成長に欠かせない水をつくり出すシステム。それが、Roots Up最大の特徴なのです。

仕組はじつに簡単。三角錐の屋根を解放し、内部に冷たい空気を送り込むためのロープを引くだけ。これで、テント中央に設置されているタンクに水滴を集めることができるんだそう。このシステムを利用することで、安全な飲料水も手に入れることができるのは、この地域に暮らす人々にとっても大きなメリットでしょう。

環境に逆らわず
適応するシステムに着目

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植物育成には厳しい環境下に暮らす人々にとって、降雨量の少なさや寒暖差などの気候状況が、つねにボトルネックにありました。環境に逆らうのではなく、環境に適応するシステム構築こそがRoots Up開発者たちの狙いだったのです。
現在、ハウスは農作物の安定的供給に向けて、設置の準備を進めているそう。「自給自足を軌道に乗せる」次なる目標はまさにそこと、Roots Up代表者のMathilde Richelet氏は、公式ブログに意欲を示しています。

Licensed material used with permission by Roots Up

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。