僕がどうしても「ULTRA JAPAN」を日本で開催したかった理由-小橋賢児-

子役から長年俳優として活躍してきた小橋賢児さん。現在、国内最大級のダンスミュージックフェス「ULTRA JAPAN」のクリエイティブ・ディレクターを務めるなど、マルチに活躍の場を広げている。まったく新しいジャンルに飛び込み、自身がどう変わったのか?TABI LABO代表久志尚太郎がその真相に迫る。

01. 探究心、好奇心がとにかく強い 結局、全部知りたいんですよ

久志  TABI LABOにはエッジランナーという仲間がいて、時代のキワを攻めている人たちとを面白いカルチャーを発信していこうって取り組みがあります。そこでお聞きしたいのが、新しい道を切り拓くことについて。めちゃくちゃ勇気がいることだと思いますが、小橋さんならどうしますか?

小橋  最初は、この悪い状況から抜け出せないんじゃないかとか、僕がアクションを起こしたからといって、世の中は何も変わらないって思いますけど、案外、動いてみると歯車が回り出す。そもそも動かないと何も始まらないですから。 僕、何か一つだけにすごく没頭するってことはあまりなくて。まだ知らないことを知りたいっていう、探求心とか、好奇心のほうが強いかな。本とか旅も大好きだし、遊びだって、バカだってやるし。結局、全部知りたいんですよ。

久志  いいですね〜。大人になっても探求心、好奇心を持ち続けるのって。実は、僕が21、22歳の頃、世界中を旅する中で発見した、生きていく上ですごく重要なテーマのひとつに、「自己能力の向上」というのがあります。

小橋  それって、どういったことですか?

久志  例えば、僕が外国の秘境みたいなところで、パンツ一丁で取り残されたら、何日生きていけるかなって。それって単純にサバイブ能力じゃなく、現地のコミュニティで受け入れてもらうために、一体何を差し出せるのかと。 それこそ、料理を作る、絵を描く、歌を披露するとか。自分が提供できる価値って大事だし、与えられるのを待つんだったら、いいものを自分で創造していく方がずっと重要だなって思ったんです。

02. アメリカ横断が縁で 「ULTRA JAPAN」の クリエイティブ・ディレクターに

久志  自分で何かを創造するっていう点でいうと、小橋さんの肩書きに「ULTRA JAPAN」のクリエイティブ・ディレクターとあります。そもそもルーツは何だったのでしょうか?

小橋  俳優休業中、語学習得のためにアメリカへ渡ったんです。そこはあえて、真冬のボストンへ。LAに行ったら、サーフィンばっかりして、遊んで終わっちゃいそうだったから(笑)。

久志  そうでしたか。僕もアメリカ留学時代、ボストンに住んでいたことがあります。

小橋  向こうに行ったら絶対やるぞ!と、決めていたことが2つあって。1つは、アメリカ人の友達をみつけて車でアメリカを横断すること。もう1つは、英語で喧嘩できるようになること。これ、2つとも実行できたんです。

久志  あはは、面白い。

小橋  それで、アメリカ横断のゴールだったマイアミで偶然に、音楽の祭典である「ウィンターミュージックカンファレンス」に出会いました。その中でダンスミュージックのお祭り「ウルトラ・ミュージック・フェスティバル」(※1)がやってて。「海外の若者の遊びって、こんなにイケてるの?マジでうらやましい!」って、すっごく心が揺さぶられたんです。 それをきっかけに、僕も日常とは違う体験がしたくなって。バーニング・マン(※2)、ラブパレード、イビサ島に行ったりと、とにかく興味が湧くものは全て足を運びましたね〜。

 

(※1)1998年にアメリカ・マイアミでスタートした世界最大の音楽フェスティバル。2013年に15周年を迎え、6日間で計30万人を動員したモンスターイベント。日本以外でもこれまでにスペイン、ブラジル、チリ、アルゼンチン、クロアチア、韓国、南アフリカ、マイアミ(US)を含む世界8カ国で開催されている。 (※2)アメリカ・ネバダ州の砂漠で行われるイベント。「No Spectator(傍観者になるな)」というルールがあり、参加者自らがパフォーマンスを繰り広げ、歌って踊って騒ぎ、100以上ものブースが砂漠に大きな街をつくりだす。

久志  なるほど。それが小橋さんとウルトラとの出会いだったと。

小橋  こういった話って、飲みの席だとか、フェスを経験してない人の前で語っても、「なんか面倒くさいヤツ」って思われて相手に響かない…。だからまずは、何らかの形で表現できるものをと、映像を作ることに。まずは、5分にまとめて、友達に見せたらすごい喜んでくれたんです。これ、わかりやすいねって。

久志  そこから映像制作がはじまったんですね。

小橋  はい、そこから試行錯誤で映像とイベントをつくりはじめ、気づけば企業と組んだりして、ゼロからものが形になっていくことの楽しさにはまりましたね。それって、できあがった脚本で芝居をしていた俳優って職業とはまた別物で。

久志  なるほど。

小橋  いざウルトラを日本で開催するってなったとき、どうやってこのカルチャーを広めよう?って考えて。で、子供の頃、ディズニーランドが日本にやってきたあの感覚と同じだ!って、ひらめいたんです(笑) 普段、遊園地に興味がない人がディズニーランドに行ったように、詳しくはわからないけど、なにやら世界から面白いのが来たぞ、って感覚で足を運んでもらう。だからこそ、ダンスミュージックというカルチャーに初めて触れた人たちをも呼び込めたんだと思います。

久志  当日はすごい熱気だったんでしょうね。

小橋  はい、たくさん人々がものすごい衝撃をうけている姿を目の当たりにしました。まさに、自分がマイアミで受けたアノ感じと一緒。

久志  へ〜、そうだったんですね。フェスって、イベント+旅みたいな感覚で、遠方からもたくさんの人が集まってくるから、余計盛り上がるんですよね。

小橋  いまって、大人がなんでも規制をかけてばっかり。だから、若い人たちって未来が見えない、どうせ何も変わらないっていう、諦めに近い感覚があるんだろうなって思います。例えば、踊っちゃダメ、禁煙しなさい、エコなことしようってなるから、すごい圧がかかっているんですよ。 そういえば、カラーラン(※3)とか出てきたじゃないですか?あれも一種の価値観を変えようって動きで。あれダメ、これダメって教育するんじゃなくて、まず自由とか楽しいって入り口から始めないと、本質にはつながらないんじゃないかな。

 

(※3)2011年、アメリカで創設されたペイントレース。参加者は5kmのコース中、カラーパウダーを浴びながら、愉快に楽しく走るというもの。

久志  すごいよくわかります。ワクワクとか、楽しいとか、はじけようぜとか、そういう沸き立つような感情というか。それって、いまの時代に一番必要な感覚だと思います。 コンテンツも同じ。純粋に自分がときめかなかったら、全然バイラルしていかないですし。いくら大人が音楽とか服とかを格好いいってプッシュしても、絶対好きにはならない。だから、今までの固定概念とか、気持ちって枠をぶっ飛ばすのが大事だなって。

03. ウルトラが終わると 山を登り切ったような気持ちに

小橋  今から数年前、ウルトラアジア初上陸を韓国で無事成功し、次は日本にウルトラをもっていきたいなって本気で考え始めました。ダンスミュージックに興味がないって人や、海外のフェスのシーンなんて知らないって人もいっぱいいたと思います。

久志 「ULTRA JAPAN」が初開催されたのは、2014年。会場はお台場でしたね。イベントの模様は以前TABI LABOでもご紹介しました。僕は行けなかったんですが、外からみていると、最先端だし、超格好いいと思いました。そういう意味でも新しい価値を提供できているんじゃないかな。 もちろん、音楽好きからしてもよかったわけだし、ソーシャルメディアでも、興奮や感動が拡散されていくし。きっと小橋さんが想像する以上にたくさんの人に届いていますよ。

小橋  ありがとうございます。今年の9月にも「ULTRA JAPAN」が開催されるので、いまからテンション上がりっぱなしです!いや、やること多すぎて余裕ないです。 でも去年の倍以上の動員数を予定しているんで、スゴイことになりそうです。

久志  いいですね〜。楽しみです。ところで、これからは何を作っていきたいですか?

小橋  ウルトラが終わると一つの山を登リ切ったっていう感じがあって。好きなことなので、これからも続けていくけど、今度は自分が何にチャレンジするんだろうって客観的に考えている部分がありますね。常に満足したことはないっていうか。

久志  いまの話、すごいいいです。小橋さんっぽい。常に新しいものを探求して、変わり続けて、そして、また、ワクワクの中に飛び込んでいくという。

小橋  人生経験の中では、お先真っ暗になったり、この山は絶対登れない、もうダメだってところで、いつもブレイクスルーするんです。

久志  なるほど。これまでのお話を聞く中で、小橋さんの物事に対する向き合い方がよくわかりました。一見やんちゃなんだけど、筋が一本通っているというか。だから、ウルトラみたいな数万人規模のイベントを牽引してこられたんだなって思います。今年のウルトラ、楽しみにしています!

◆今年で第2回目!「ULTRA JAPAN 2015」◆日時:9月19日(土)、20日(日)、21日(月・祝)開場9時/開演11時/終演21時(予定)会場:TOKYO ODAIBA ULTRA PARK(お台場ULTRA JAPAN特設会場/東京都江東区青梅)URL :http://ultrajapan.jp/pc/

 

小橋賢児/Kenji Kohashi

俳優、映画監督、DJ、イベントプロデューサー1979年、東京生まれ。俳優休業中、語学留学先のアメリカで「ウルトラ・ミュージック・フェスティバル」との運命的な出会いを果たす。その後、同イベントの日本上陸版「ULTRA JAPAN」のクリエイティブ・ディレクターとなり、お台場での日本初開催などに尽力する。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。